人気ブログランキング | 話題のタグを見る

題詠blog2011


by kitapara

連作「ハカイヨノユメ」


 「ハカイヨノユメ」


 子羊がめえめえめえと鳴いていた 悪夢は僕のポケットの中


 生きづらい息もしづらい高速のジェットコースターは転覆す


 剥製の青い鳥たち寄せ合った羽根はちぎれて毒ガスになる


 見ないふり気づかないふりドーナツに穴があるのは当然だから


 楽園でまた会いましょう 殺戮のベル鳴り響く三月二十日


 地下に射すひとすじの光 尖らせた傘があなたの心臓を衝く


 地上への出口はそれも入口でまたあたらしい悪のはじまり


 悪いのは世界でないと気付くときひとつのおとぎ話が終わる


 真っ白な花が静かに枯れていく(ねえ、ほんとうに悪いのはだれ?)


 テロリズム、通り魔殺人、バスジャック、悪夢は今日もあなたのそばに


                                            (未来10月号)



*タイトルは凛として時雨「ハカイヨノユメ」より

ちょうど地下鉄サリン事件やオウム真理教についてのノンフィクションを読んでいたり
高橋克也が逮捕されたりした時期につくったものです。
もともと個人的に新興宗教やら犯罪心理やらに興味があったこともあり
そんな感じの連作になりました。

「ほんとうに悪いのはだれ?」という問いに関しては
誰にも答えられないのかなと思います。

見る方向や光の当たり方によって
色が変わるというのが世界ですね。

ほんとうに悪いのは誰か?
正義とは何か?
幸福とは何か?

もちろん人は人を殺してはいけない。

オウム幹部であった高学歴エリートたちは
彼らの歩いてきたその道で幸せになれなかったのだろうか?
どうして科学で解明することのできない宗教にのめりこんだのだろうか?
彼らは孤独だったのだろうか?

……この問題について、私にはいまだにうまい文章で表現することができません。
なので短歌にしてみたというわけです。

そしていま言えるのは
もしも時代が違えば、私自身も彼らのようになっていた可能性はあるということです。


ちなみに当時は小学生だったので
臨時のニュース番組ばかりで夜のアニメがつぶれてつまんないなーって
思っていました。あほの子ですね。
# by kitapara | 2012-10-09 02:44 | その他

連作「Communication」


 「Communication」


 So good communication. わたしたち平成うまれピコピコ育ち


 So good communication. 新着メッセージが一件届いています


 So good communication. レプリカの台詞ならべて英雄ごっこ


 So good communication. サイダーのごと純粋にきらめく悪意


 So good communication. ぬくもりを忘れてしまう、ひかる指先


 So good communication. 誰もみな自分のためにつぶやいている


 So good communication. 嘘をつくことは簡単 なのに、わたしは


 So good communication. ましかくにトリミングした青い悲しみ


 So good communication. 文字だけでふかくやさしく愛しあえたら


 So good communication. 我々は言葉が無意味だと知っている

                                      
                                      (未来6月号)
# by kitapara | 2012-10-09 02:19 | その他

連作「って!」

 
「って!」


 桃色の炭酸水のしゅわしゅわのくすぐったさにぼくは困って


 ブレーキのうまくきかない自転車と制服 それが装備のすべて


 排気ガスにゆられてもなお美しく咲くばらの花 きみは歌って


 ローファーのかかとを踏んで歩いてた あんな大人になりたくなくて


 わかってた、本当はいつも退屈でなにかが足りないような気がして


 絵文字にも一喜一憂するようなこの喜びにいまは溺れて


 またいつか闇にのまれてしまう日のために希望のうたをつないで


 これが恋、きみが愛しい、あたたかくふるえる青い鳥にさわって


 ハロー、ハロー、聞こえてますか、聞こえたら、きみの百パーセントで笑って


                                             (未来8月号)


*関ジャニ∞「って!!!!!!!」を聴きながら作った連作。
タイトルはいまつけました(ただのパクリ)。
# by kitapara | 2012-10-09 02:16 | その他

連作「タラチネ」

 
 「タラチネ」


  むしけらのように叩かれ罵られ徐々に広がる天井の染み


 「たからものはおかあさんです。」「しょうらいのゆめはきれいなおよめさんです。」


  愛される術を知らずに押し入れでがじがじがじがじ爪を噛んでた


  母が泣く「あんたみたいな馬鹿な子を産んで私はとても悲しい」


  父が笑う「お前は俺の人生の汚点だ なんて不細工なんだ」


  学校で習った 家族は日曜に動物園へ行くものらしい


  七歳のあのこは今もベランダに横たわってる 雪を食べてる


  父からの呪いを母に渡すためわたしは伝書鳩として飛ぶ


  ぱさぱさの食パンに塗るイチゴジャム いつかしあわせになれるのかなあ


  母親の温度を知らぬ私には母親になる資格などない



                          (未来3月号)
# by kitapara | 2012-03-04 00:59 | その他

題詠blog2011 まとめ ①

001:初 こぼれないように手のひら握りしめ笑った そうだ最初はグーだ
002:幸 にびいろの有刺鉄線こえてゆけそこにおそらく幸せはある
003:細 細菌とウイルスくらい違うっていわれてもよくわからない嘘
004:まさか ささくれはむいてもむいてもささくれてまさか「さびしい」なんて言えない
005:姿 うす曇るビニール傘のむこうにはだあれもいない世界の姿
006:困 君が泣いているというのにポケットに愛が入ってなくて困った
007:耕 荒れ果てた小惑星を耕せばうつくしい石ころばかり有る
008:下手 みずたまり越えるのが下手だったころにじむ夕陽を踏んで帰った
009:寒 こんなにも寒かった ああ ひだまりを知ってしまったあとで孤独は
010:駆 家族だった人の残骸 いつまでもひっくり返っているミニ四駆

011:ゲーム ゲーム機の中であの子がはにかんで三十七度二分の初恋
012:堅 正しさや真実よりも納豆を百回まぜる堅実な人
013:故 ひとつしかない空の下かえりましょう水平線のない故郷へ
014:残 憎まれも愛されもせず生き残りゲームの勝者として笑う君
015:とりあえず とりあえずあかりを消してみてごらん今宵の月はどういうかたち?
016:絹 世界からはみだしている絹糸をつむぐ わたしはきみが好きです
017:失 失ったよりも多くのやさしさを注いで甘いカフェ・オレになれ
018:準備 まっしろなスケジュール帳 空を飛ぶための準備は整いました
019:層 壊れてるのは君だろうオゾン層みたいに淡いブラウスを着て
020:幻 幻のポケモンが出る裏技を知ってしまった もう戻れない

021:洗 天使にはなれないのだと思い知る うがい手洗い裸足のわたし
022:でたらめ でたらめに押したボタンでつながった五月の風に似ているHELLO!
023:蜂 愛なんてひとそれぞれでかまわない蜂蜜入りのカレーもあるわ
024:謝 永遠にそばにいるって思ってた もう謝ることすらできない
025:ミステリー ミステリー小説みたく鮮やかに計画的にぼくを殺して
026:震 どうして、と君は尋ねた 桃色の頬をすべって震える涙
027:水 君の棲む海の底へと潜りつく僕は水中メガネをはずす
028:説 伝説の勇者も村人Aもみな話し相手をさがして ひとり
029:公式 「ひとり+ひとり=殺し合い」これが公式(試験に出ます)
030:遅 手紙魔は愛されるのに遅刻魔がゆるしてもらえないのは何故だ

031:電 電子音的おしゃべりでみたされた教室 あのこがぴこぴこ笑う
032:町 きらきらがこぼれています君は虹のはじまる町に住む人でした
033:奇跡 シャボン玉 ぜったいだれも触われないという奇跡のうつくしさです
034:掃 この道をならんで歩いた人がいた わたしは掃除のできない女
035:罪 自販機でいろんな罪が買える世だ今日のわたしはバスジャック犯
036:暑 なぜだろう 今年も夏は暑いのにパピコを分けあう相手がいない
037:ポーズ 「はいポーズ」っていわれたらとりあえずピース、みたいな真面目さが嫌
038:抱 抱きしめてあげるね ちゃんとおやすみのキスもまぶたにしてあげようね
039:庭 庭のない暮らしは不便 恋人の死体を埋めることができない
040:伝 チョコレート砕いて溶かして固めたら愛は伝わる それだけのこと

041:さっぱり さっぱりこん! 君の言いたいことなんて僕はちっとも理解できない!
042:至 もうずっと夏至が続いている部屋でセーラー服のスカーフほどく
043:寿 カラフルでPOPでちょっとシニカルで須藤寿にわたしはなりたい。
044:護 庇護された子猫のように桃色の毛布でくるまれて眠りたい
045:幼稚 幼稚園の庭で育てたヒマワリをときどき思い出す 二十五歳
046:奏 ドレミファソだけで演奏できるうた よろこびはただシンプルなもの
047:態 目に見えぬところで君が殺されて事態はかなり深刻である
048:束 枯れてゆく花束のごと僕たちはいつかかならず死ぬということ
049:方法 そうなんだ みんな正しい方法で生きているんだ すごいね ふーん
050:酒 いつかまた天国で会うそのときはうまい日本酒飲ませろよ、ばーか
# by kitapara | 2011-11-30 22:13 | 題詠blog2011