「ハカイヨノユメ」
子羊がめえめえめえと鳴いていた 悪夢は僕のポケットの中
生きづらい息もしづらい高速のジェットコースターは転覆す
剥製の青い鳥たち寄せ合った羽根はちぎれて毒ガスになる
見ないふり気づかないふりドーナツに穴があるのは当然だから
楽園でまた会いましょう 殺戮のベル鳴り響く三月二十日
地下に射すひとすじの光 尖らせた傘があなたの心臓を衝く
地上への出口はそれも入口でまたあたらしい悪のはじまり
悪いのは世界でないと気付くときひとつのおとぎ話が終わる
真っ白な花が静かに枯れていく(ねえ、ほんとうに悪いのはだれ?)
テロリズム、通り魔殺人、バスジャック、悪夢は今日もあなたのそばに
(未来10月号)
*タイトルは凛として時雨「ハカイヨノユメ」より
ちょうど地下鉄サリン事件やオウム真理教についてのノンフィクションを読んでいたり
高橋克也が逮捕されたりした時期につくったものです。
もともと個人的に新興宗教やら犯罪心理やらに興味があったこともあり
そんな感じの連作になりました。
「ほんとうに悪いのはだれ?」という問いに関しては
誰にも答えられないのかなと思います。
見る方向や光の当たり方によって
色が変わるというのが世界ですね。
ほんとうに悪いのは誰か?
正義とは何か?
幸福とは何か?
もちろん人は人を殺してはいけない。
オウム幹部であった高学歴エリートたちは
彼らの歩いてきたその道で幸せになれなかったのだろうか?
どうして科学で解明することのできない宗教にのめりこんだのだろうか?
彼らは孤独だったのだろうか?
……この問題について、私にはいまだにうまい文章で表現することができません。
なので短歌にしてみたというわけです。
そしていま言えるのは
もしも時代が違えば、私自身も彼らのようになっていた可能性はあるということです。
ちなみに当時は小学生だったので
臨時のニュース番組ばかりで夜のアニメがつぶれてつまんないなーって
思っていました。あほの子ですね。
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by kitapara
| 2012-10-09 02:44
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